天正13年(1585年)、蜂須賀家政が阿波に入国した時代、当時の吉野川はしばしば氾濫し、流域のまちは、稲が育ちにくかった。家政は、その地域で、梅雨前に収穫できる「藍」に目をつけ、藍の生産を保護した。当時、脇城の城代であった稲田植元は、その意向を受け、脇町で藍商を奨励した。脇町(徳島県)では、吉野川の豊かな水の恵みを生かして、藍商が繁盛し、商家は、巨万の富を築き上げたという。土佐や讃岐をはじめ、さまざまなまちに藍染めの製品が届けられた。

現在、脇町(徳島県)の中心を東西にのびる脇町の「南町通り」沿いには、江戸時代から昭和初期にかけて立てられた商家が80数軒が並ぶ。塗籠め壁や出格子、虫籠窓を構える 家々の多くは、藍商で栄えた商家だ。特徴的なのは、それらの多くは、屋根の上に、競うように「うだつ」を構えていることだ。
立派なうだつを構えた商家のなかでも、吉田家住宅は、脇町(徳島県)で一二を争う豪商として知られてきた商家だ。天保6年(1835年)に立てられ、藍玉をつくりや問屋業などで財を成した。間口約20m、奥行き約55mの広大な敷地を誇り、藍蔵はじめ5棟を持つ。なお、すぐ裏手には高い石垣が積まれている光景が見られるが、これは船着き場が設けられた跡だと考えられている。かつての吉野川は、脇町(徳島県)のすぐ南を流れていたため、そこで藍の積み下ろしが行われていたのである。
船着き場跡のすぐ横に立つ蔵の一部は、現在は改装され、喫茶・食事処「藍蔵」となった。昔ながらの土蔵の空間は、当時の雰囲気が漂い、心地よいひとときを過ごせる。「藍蔵」のメニューのなかで人気は、「地鶏せいろ蒸しセット」(970円)である。徳島県の名物、阿波地鶏をつかったせいろ蒸しで、旬の山菜や野菜がふんだんに盛り込まれ、滋養たっぷりで美味である。
昔ながらの町並みを堪能できる脇町(徳島県)は、現在は、徳島県を代表する観光スポットのひとつとして人気を集めるようになった。その契機となったのは、映画のロケが、脇町(徳島県)で行われたことにある。脇町の南町通りを、東に抜けていくと、大谷川とぶつかる。柳並木がうつくしいその河岸の一角に、一風変わった、二階建ての建物が立っている。脇町劇場オデオン座である。脇町劇場オデオン座は、平成9年(1996年)に公開された西田敏行主演の映画「虹をつかむ男」(山田洋次監督)の舞台となった建物だ。「虹をかける男」は西田敏行演じる白銀活男が、町の人々に面白い映画を観せたいと奮闘する人気映画。このとき、脇町劇場オデオン座は、芝居小屋として立てられた昭和9年(1934年)当時の姿に復元された。回り舞台、うずら桟敷、舞台下の奈落など、芝居小屋の様子は独特の味わいで、現在でも、脇町(徳島県)の人気スポットとして欠かせない存在である。
脇町(徳島県)には、藍商として栄えた昔ながらの商家が並び、ゆったりとしたときの流れを感じるまちだ。「うだつ」を構えた本瓦葺きの重層な家々を眺め、昔日をしのぶひとときを過ごしてみてはどうだろうか。
(文と写真)井上晴雄
■DATA 美馬市観光協会
美馬市脇町大字脇町92
電話: (0883)53-8599
■DATA 藍蔵
美馬市脇町大字脇町55
電話 0883-53-2333
営業時間 11~14時(一階の土産店は9~18時)
■DATA 脇町劇場(オデオン座)
徳島県美馬市脇町大字猪尻字西分140-1
電話 0883-52-3807
入場料200円 子供100円
交通 JR穴吹駅から車で約10分
時間 9~17時(入館は~16時30分)
火曜休(祝日の場合、翌日休)
※1~3月は火水木が休
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(徳島県の特集 目次)
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